雨の穂高岳へ挑む

(涸沢カールを降る)

 
2000Sept.              中山 傳、上田 昌、岡崎正晴、崎田信義

<行程>
 
  日時: 9月15日(祝)、16、17日(日)は雨の確率が20、40、50%との予報
  集合場所: 阪急宝塚線蛍が池駅前に6:30、南茨木駅前に7:30(道間違)
  アクセス: 東名小牧→中央道・松本IC→R158沢渡駐車場→上高地(6時間)
              363K/吹田     35K          タクシー
       帰途の時間:松本IC→休憩(屏風山SA)→吹田IC迄が5時間
  費用: 山小屋(8,500円x2泊/人)、タクシー4,000/台(往)、4,400/台(復)
      高速料金(往復)15,000円、ガソリン代 5,000円/往復50リッター
  行程: 9/15日:上高地バスターミナル(40)明神(50)徳沢(50)横尾(単位=分)
            夕方18:00頃横尾山荘に到着し一泊  
      9/16日:横尾(60)本谷橋(120)涸沢小屋(180)北穂(120)D沢のコル
           (180)涸沢小屋に夜の19:20到着し一泊  
      9/17日:6:40涸沢小屋→9:20横尾山荘→11:40河童橋/昼食
           タクシーで沢渡駐車場へ、温泉に浸かり、14時帰途へ
 
<登山校その一>  
 結果的に三つの穂高登頂は叶わず北穂高(3,106m)に全員で登った。
台風崩れの温低が日本海側に、台風17号が関東にあり、二日目は小雨
と強風に見舞われた。
 
 名神高速の事故で京都まで2時間余、出鼻をくじかれたが、上高地の河
童橋から前穂や奥穂の側のジャンダルムが高々と見上げられた。翌日の
天候を気にしながら初日に泊まる山荘に向かう。
   
 梓川沿いの道は平坦でハイキング気分、底まで透明な水と広い川幅が
清涼な景色をかもしている。 横尾山荘は近代的な設備で風呂にはジェット
流があふれ、爽快な気分で明日への英気を蓄えた。 山荘の人に天気予
報を聞いたが、CATVを見て下さいとな。 経験に裏付けられたピンポイント
予報を期待したのだが。

 翌朝6時半に穂高を目指して出発、予定通り3時間で涸沢小屋に到着し
た。 途中の本谷橋を過ぎた頃から小雨が降りはじめた。 涸沢小屋からは
設営したテントが可愛らしく見えるが、周りの山々に吸い込まれて距離感
がつかめない。 小屋の軒先でコーヒー等を沸かし、胃袋を温めて北穂に
向かった。 急な取付きが高度を増してゆく、やがて長い鎖場、鉄梯子が
迎えてくれる。
 
 高さも2800m位に達しただろうか、横風と小雨とガスが行く手を見えなく
する。 四人で慎重にと声を出し、頂上の見えない雲の中で歩を運ぶ。
時間も昼が過ぎ、携帯コンロでメン類と熱いコーヒーの昼食を摂る。

 下山する人に訪ねながら更に歩を進めたら、突然北穂と奥穂の分岐に到
達した。 そこからは5、6分で北穂の頂上(3106m)に着いた。 尖った瓦の
ような石だらけの頂上で、すぐ側に小屋も在る。 槍から来た人がこの先に
行くには危険だろうとアドバイス、槍への予定はないが、天候が相当に災
いしている様子だ。 槍も見えない頂上で汗と小雨の記念写真を撮った。

 元の分岐地点に戻りいよいよ奥穂を目指す。 大きな岩峰、痩せた尾根
が連なり奥穂から逆に辿って来た二人がこの先は中々険しくて難しいと言
う。  我々の実力を見透かした様な話だが、初めて出くわす絶壁の岩道、
アップダウンの激しい岩だらけの尾根には危険すら感じる。 足を踏み外
せば確実に命が無くなる所だ。
 蟹の横ばいさながら僅かな岩の掛かりに靴を掛け、体を岩に被せるよう
に脚を運ぶ。 また10m位の急な下りが足を震わせる。幸いガスで下が見
えないので足は進むが、ザックが重くなる。 声を掛け合いながら奥穂を
目指して岩尾根を辿る。 分岐点から二時間が経った。
 
 急峻な峰に取りつく深い鞍部に着いた、地図で推察するにD沢のコルら
しい、前の峰は涸沢岳(3110m)らしい。 見るからに難所ばかりだ、時間
は既に四時をまわった、行くべきか退くべきか、意見が別れた。 下るにも
道がない、地図には岩場の記し、少し登って見ることにした。

 直ぐに、この先の濡れた岩峰を登るには時間、体力が足りないと感じた。
朝から10時間ちかく登り降を続けている。  遂にD沢のコルから下る事に
決めた。 幸い午前中に休んだ小屋やがすり鉢状の底に見え、石だらけの
ガレ場と雪渓を下れば、涸沢小屋に行けるとふんで下り始めた。
 時刻は16時20分、小雨混じりの空も薄暗くなってきた。

 

(雨の北穂高頂上)


<登山校その二>

 道のない瓦礫のような所に踏み入った。 下を目指してひたすら歩くしか
ないのか、右手には奥穂高に登る道がある筈だが小さなクラやコブがある
のみで、見当たらない。 なんとか道に出会うようにと右下へ右下へと進み
ながら、標(しるし)の無いガレ場を下る。
 大小の岩や石が続く、草木が生えている所では掴みながら降りる、時々
滑ベってはまた降りる。うんざりする、小さな残雪をやり過ごしたがルートは
ない。 距離が判らない。 行けども行けども、まだまだ瓦礫の石がつづく。
 一時間降りても道に出会わない、進行方向に小屋が見え、さえぎる樹木
がないので不安はない。

 突然一人が岩に足を取られて顔を打った。 鼻血を出している、紙と濡ら
したタオルで応急処置をした。 なんとか出血が止まりおそるおそる歩き始
じめる。 辺は薄暗くなって浮き石の見分けが困難だ、ゆっくりと焦らずに
降りれば良いと自分に言い聞かせる。
 
 漸く石のガレ場の中に踏み固めた道を見つけた、声を掛けると安堵感
が広がった。   そこに着くとまだ石ころ道が続いている、暗くなって懐中
電灯をつける。 暗がりでは石に塗ったペンキ標を頼りに進む事にする。
しかし思うようにマークが見つからない所もある、赤い標を辿るが見失う、
幸い黄色のマークが目に入った。 小屋の明かり、テントの明かりが近く
なるが依然として道には遭えず、マークを電灯で探しながら歩く。 暗闇
大きなが迫ってくる、抜け道も見つからない。 模索していると沢らしい場
所が見つかった、近道と思い水のない涸れ沢を降りる事にする。

 
 程なくペンキ標も見つかり灯のついた小屋が見えてきた。 皆な緊張感
から開放され、午前中に休んだ涸沢小屋に漸くたどり着いた。 D沢のコル
から3時間が経過していた。 小屋の人も親切に夕食の用意と怪我の手
当てにガーゼを出してくれた。 話しでは昔はあのガレ場を通っていた由、
道は無かったが降りる方向は適っていたようだ。

 涸沢の大カールを余儀なくも降りる事になったが、自然が創った氷河の
削り跡は見かけ以上に巨大で、悪石だらけだった。 風景として見るカール
とは違い、その中では恐怖感もあり、自然の極みにも似た印象が残った。
 貴重な体験をしたが脚がパンパンに張り、寝付きも悪い。 無事に降りて
きた事で、互いの信頼感が深まったと無言の顔が語っている。 激しい雨
音に目を覚ましながらも、疲れた身体をやすめた。

(涸沢岳への尾根筋)

 

<登山校その三>

 17日最終日も朝から小雨模様だ。 皆疲労が強かったせいか充分には
寝れなかった様子だ。 上高地まで昨日のルートを戻る事にし、山小屋に
サヨナラをした。 涸沢小屋は建替えの予定と云う、中高年の登山者が
多くなり、新しい設備でアルピニストを迎えたいとこだろう。

 横尾からは足取りも軽く涸沢小屋から5時間で上高地に着いた。 小雨
も止んだが山頂は雲で覆われたまま、なかなか微笑んでくれなかった。
これで今回予定した登山は無事に終了となった。
 
 初めて挑んだ北アルプスは険しく近づき難い結果になったが、四人に多
くの経験と課題をくれた。 しかも四つの穂高岳の一つを踏破出来た喜び
はなんとも言えない満足感がある。 そして改めて大自然の凄味に畏敬し、
次の機会に経験を活かし、計画で残った奥穂高、前穂高に登りたい。

(涸沢ヒュッテも風景に入る)


<反省>

 (1)準備
 事前に分担を決めたが計量をしないまま、共同の物品がダブリ、
 個々人のザックの重さがまちまちになった。 岩場で重心が高く
 なり、振られる事もある。 出来るだけ軽くなるように協力が必用。
 
 地図やガイドブックでは判らない危険地帯を経験者等から情報
 をたくさん入手し、登るコースの特性を把握しておく。
 
 (2)時間と体力  
 高山では登った距離と高度が推計しにくいので、自分のいる所
 がつかめなかった。 経過時間のみでは地図上での居場所を特
 定出来ない。 強風下の尾根で昼食したが、20分位で北穂頂上
 の小屋に着ける位置に在った。
 絶壁に近い痩せた岩尾根は歩くより這い登る感じで、一時間も
 連続すると腕の力が鈍ってきた。 気の弛みが事故につながると
 言うが、体力の充実が前提で、腕力アップも危険から身を守って
 くれそうだ。
 
 (3)判断
 今回は奥穂へ向かう涸沢岳(3110m)取付きで前進を止めた。
 パーティーの位置が曖昧だったけど安全な方向に進路を取った。
 700−800m下に立寄った小屋が見えたのも幸いした。 道で
 も、迷えば元に戻ると言う鉄則がある。 地形や距離の情報を正
 しく把握して判断材料を多くしたほうが良い。
 また低い山並みと異なり、地図と実際のサイズが把握しにくか
 った。 大きな山でのスケール感覚が違っていたのだ。

 (4)装備
 今回は悪天候に遭い装備力を試される結果になった。四人とも
 雨具、水、予備食、コンロ、懐中電灯等は充分に揃っていた。
 また高い山では高度も測れる時計があれば位置確認がし易い。

 それにしても一人では行けない悪天候のなか、北穂に登り安全に降りる
事ができた。 三人に感謝し、これからも自然を良く知り、自然に浸りながら
山を歩こう !! (崎田記)

 

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