最北の百名山「利尻富士」と花の「礼文島」散策

 
 Rishiri2002                                          石原 祐教
 
1.利尻富士へ登りたい

(1) 10年程前、テレビで利尻島の地下水(伏流水)を紹介した番組があり、40年間程
 地下に潜った雨水が再び地表に湧き出るために大変美味しいという内容であった
 ので、是非訪ねてその味を試したいと思っていた。
 尤も、その当時は東海自然歩道を歩く程度で、観光を目的としており、利尻富士
 を登頂しようとは夢にも思っていなかった。
(2) 5年前屋久島の縄文杉観光に行ったとき、日本百名山の最南端「宮之浦岳」は日
 程の関係もあり登れなかったが、いつかはと思っていた。また、最北端の利尻富士
 を登れば、一応百名山を股に掛けた事になるなどと取り留めもないことを考えていた。
(3) 4年前から松井ご夫妻にお世話をしていただいている当「山歩楽会」に入れてい
 ただき、月2回の比良山系・六甲山系・生駒山系の登山や、一昨年からの一泊夏
 山登山(白山と御嶽山、本年は立山の予定)のおかげで体力的にも自信が持てる
 ようになってきた。
(4)本年4月末頃登山用具販売店で、パンフレットを眺めていたら、この利尻富士登山
 の企画があり、時期的にもよかったので、思い切って参加することにした。
 (尤も、悪天候や、疲れた時は途中でパーテイが下山してくるのを待っていればよい
 と気楽に考えていた)

利尻富士(利尻岳1719m)

2.利尻富士登山の思い出
 2002ワールドカップサッカーで日本中が沸きかえっていた6月13日(木)、稚内から
利尻鴛泊へのフェリーから眺める利尻富士はその頂上を雲に覆われており、全容は望
めなかったが、明日はその頂上を目指すのだと思うと全身に力がみなぎるようだった。
 参加メンバーは総計30人で、女性20人、男性10人の内訳で最近の男女構成傾向と
ほぼ同じとのことであった。5組がご夫婦。最高年齢者は松江から来られたカトウさんで
78歳とのこと。小生なんかはまだまだ洟垂れ小僧だ。
       
 さて、登頂した6月14日(金)は、ガイドさんの話によると年に何日もない登山には絶好
の薄曇りで、心地よい風が頬をなぜる日であった。 我々はなんと恵まれているのだろ
うと感謝した。
 この鴛泊コースは20年前に今の皇太子殿下がお登りになられたとの事で、そのおか
げで利尻島内の道路事情が大変よくなったとのことだ。
 既に明るくなっている午前4時マイクロバスで利尻北麓野営地(3合目)に送っていた
だき、全員集合後、10分足らずで、百名水の一つ甘露泉に着き、本当においしい湧
き水を2Lのペットボトル一杯に詰めた。  ここでガイド小早川さん(八尾市出身)の
「九合目でようやく半分終わりと思い余裕を持って登りはじめるように」と言う指示を受
け、準備体操を行いいよいよ出発だ。午前5時、気温8℃。

 最初は「マイズルソウ」、途中からは「ザゼンソウ」やその他いろいろの草木の歓迎
を受けた。名前を一々教えいただいたが、すべて右から左だ。また、ウグイスの澄み
切った鳴き声に励まされながらの登山であった。
 この利尻島には蛇や熊は生息していないとのことだ。

 5合目からは,足の負担を軽減するためダブルストックで樹木の間を歩いた。ダブル
ストックについては、当山歩楽会のリーダー松井氏ご令室様に使い方のご指導を
頂いた直後であったが、思った以上に楽に登り下りができたように思った。
 標高1218mの8合目は戦前の北海道長官が詩を詠んだ「長官山」と言われていると
ころで、ここでようやく少し雲に隠れた「利尻富士」のそびえ立つ姿を眼前に仰ぎ
見ることができた。足の方は思ったほど疲れた様子はなく快調であった。同じパー
ティの皆さんも全く元気である。小休止の間に屈伸等をしてケガの無いよう万全を
期した。「ここから正念場の9合目」(標高1,400m)にいよいよ到着。 ここで全員
の記念写真を撮ったが皆さん余裕綽々だ。

       
 これから先は樹木がほとんど無いいわゆるガレ場だ。 最近南峰(1,721m)のルー
トが崩壊したとのことだが、足元は火山礫で滑りやすく苦闘の連続であった。なる
ほど「9合目で半分終了」の意味がよくわかった。 ガイドさんの「しっかりストレッチ
をしなあかんでー」とかの関西弁での適切なアドバイスを受けながら、11時ちょうど
に利尻富士北峯(1,719m)に念願の登頂を果たした。 3合目を出発して約6時間を
要した。 「ヤッター・万歳」本当に長かった。
     
 頂上の大山神社にお礼の後、感激に浸りながらの昼食。実登山高さ1,500m、万歩
計を見ると13,500歩。頂上近くに足元を万年雪に覆われた「ローソク山」が聳えていた。
快晴ではなかったため、また日射しが強くなかったため逆に順調に登れたが、頂上
からの眺めは利尻島東海岸、礼文島、本道(北海道、ついでながら本州は内地との
こと)が雲間から少し見える程度で、天気が良ければ望められると言う「サハリン」も、
当然無理であり残念であった。

 我々と同じDNAを持つ縄文人はシベリアからアムール川を渡り、サハリンに着てこ
の「利尻富士」を見て、しかる後北海道から本州に来たとの説明を受けた。つまり我
々の先祖がこの利尻富士を眺めていたと言うことになり感慨ひとしおだ。
 帰りは「せっかく無事登頂したのだからケガをしてなるものか」と足元に十分注意
しながら、また草花・野鳥に見送られながらの長い5時間の下山だった。特に、アカ
ゲラ・クマゲラの樹木を突っつく心地よい響きは疲れを癒してくれた。
       
 合計2.5Lと十分に用意した飲料水は下りの4合目で空になり、ガイドさんのを分
けていただく羽目になった。薄曇りの快適な気候でも飲料水が不足した事を肝に銘
じておくべきだ。
午後4時過ぎガイドさんを先頭にして全員そろっての3合目の利尻北麓野営地へ帰着。
添乗員さんの話だと、一昨年は雨で合計13時間を要して、雨中を黙々と歩かれた。
昨年は5合目より上が快晴で強烈な日射しのため合計12時間だったそうで脱水症状
になられた方もいたそうだ。今年は本当に恵まれていた。

(八合目の筆者)

3.礼文島の花

 3日目の午後と4日目の午前中は利尻富士登頂のご褒美として礼文島のお花を
観賞させていただいた。
 「チシマフウロウ」、「レブンシオガマ」、「レブンウスユキソウ(エーデルワイス)」は
何とか名前を覚えたが、50種類以上の花が咲き乱れていた。 ここでも花の名前
を一々教えていただいたが、やはり右から左であった。お経に描かれている極楽
浄土とはまさにこの島のことではないかと思った。
 西側の斜面にお花が多い理由をレンジャーさんに尋ねてみたが、はっきりした事
は解らないとのことであった。 後は写真を見ていただくこととしよう。
 曇り空で、微風の天候に恵まれ、海に目をやれば所謂ベタ凪であった。こんなに
風が吹かないとは信じられないと添乗員さんが話していた。また、礼文島南端から
雲間にかすかに見える利尻富士の稜線は、所謂富士山型で大変滑らかであった。

<礼文島の花々>

(レブンシオガマ)

(チシマフウロウ)

(レブンウスユキソウ /エーデルワイス)

4.終わりに

 天・地・人に恵まれた4日間であった。すべてことが順調に進んだ。 贅沢を言え
ば逆に悪天候での登山を経験してみたかったような気がしている。これは欲張りな
のだろう。それと3日目が「ウニ」の解禁日であったが、食卓にでたムラサキウニや
1個500円で売っていた馬糞ウニはさすがに美味しかったけど、思ったほどには身
が多くなかった。
 ともかく今回ご一緒に参加された皆さんにお世話になり厚くお礼申し上げます。
またご一緒の機会がありましたらよろしくお願いいたします。それといろいろとア
ドバイスを頂いた山歩楽会の松井会長さんご夫妻を初めメンバーの方々に感謝
いたします。
今後もますます心身ともに鍛え、百名山を一つでも多く踏破していきたいと思って
おります。
                                             以上
5.行程表

月日

時間

行程内容

 @6/13

 晴|曇り

10:00 関西国際空港発(JAS512便)→羽田空港(11:05着)
  12:20 羽田空港発(ANA573便)→稚内空港(14:05着)

=タクシー=稚内港

  15:30 稚内港発〜フェリー〜鴛泊港(17:10着)=ホテル【泊】
 A6/14

 曇り|晴

 4:00 ホテル=利尻北麓野営地(三合目標高210m)(4:30発)・・・

甘露泉(5:00 発)・・・〈鴛泊コース〉・・・四合目(5:45発)・・・

六合目(7:10発) 八合目(長官山)(8:45発)・・・九合目(9:40発)

・・・利尻岳山 頂(1719m、11:00着・11:45発)・・・九合目(12:40発)

・・・ 八合目(13:35発)・・・六合目(14:45発)・・・四合目(15:50発)

・・・甘露泉(16:10発)・・・利尻北麓野営地(16:30発)ホテル【泊】

 

 B6/15

 曇り|晴

 8:00 ホテル=島内一周観光(姫沼・オタトマリ沼・仙法師御崎公園

・富士野園地)=鴛泊港

  13:15 鴛泊港発〜フェリー〜香深港(13:55着)

=桃岩フラワーロード登山口・・・知床(17:00着)=ホテル【泊】

 C6/16

 曇り

 8:00 ホテル=礼文林道入口・・・ レブンウスユキソウ群生地・・・

礼文林道入口(10:30着)=〈昼食〉=香深港

  13:05 香深港発〜フェリー〜稚内港(15:00着)=タクシー=稚内空港
  17:05 稚内空港発(ANA430便)→関西国際空港(19:30着)

 

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