大峰99             山のあなたに                与作
 1999年8月奈良県の大峰山系に初めて脚を運んだ。 この山歩楽会に入会した
きっかけでもあり、温泉付きの山歩き企画に飛びついた。  
 女人禁制の山上ケ岳は今でも仕切りがあり、恭しくもあるが大自然の中での
門柱は意味もないと感じた。 信者でもない私が意見を述べる筋合いはないが
数年以内には解けると思っている。  
 
 大峰山系は修験道の祖・役行者(えんのぎょうじゃ)が開いた吉野山から、120
キロ離れた熊野の本宮迄の連峰であり、山岳修行者の霊場でもある。  
今年は役行者の1300年法会に当たり、昨年秋にはNHK-TVでも奥駆けの様子
や峰々の映像が放映(録画ビデオ有)された。 見るからに険しいコースでもある。
 
 八月に登った所はその入口で、雨後のせいで深山の霊気が漂よい、いよいよ
私の興味を誘った。 草木の一本々が何やら幽玄な姿、色合いをかもしている。
ぽっと来て踏破出来るわけは無いが、これから一山づつ登ってみたい山々
でもある。  
稲村ケ岳から垣間見た連峰の彼方、滝や海を通り越して富士の山が映るかも
知れない。 さらに万葉の昔から息づく深山の花、幽谷の流れを自分の足で踏
みしめて歩いてゆきたい。  
 
 麓の路の電柱には陀羅尼助(ダラニスケと言い秘伝の胃腸薬)の看板が目立ち、
心身共にストレスが解消出来そうな町並みを構成している。 もっともっと奥  
には違った姿、匂いが満ちているのだろう。 またあなたに逢いにゆこう!  
 
 コース: 天川村・洞川温泉=法力峠=稲村カ岳=山上辻-レンゲ峠=大峰大橋
  (往復はバスを利用)  
2000/6      山のあなたに(その2)  与作
 昨年に続き大峰山系をめざして大普賢岳に登った。 生憎の雨予報で、前日か
らあちこちの予報を聞き、午前中は何とかなるとの期待で出発する。 豊中市か
ら三人パーティーでの日帰りだ。(2000年6月3日、2時間半で和佐又ヒュッテに着く)
 
 足元の紐を締めなおして歩き始めたらポツリポツリ降り始めた。予報通り  
だが小雨を期待して山頂を目指す。 途中には窟(いわや)、険しい鉄梯子コ
などが続き、キレットでは谷から吹き上げる風が汗と雨を拭ってくれる。  
 
 期待した石楠花が尾根路に上がった所に見つかった。 これぞとばかりに
カメラに収める、もうこの先には咲いていないかも知れないと思って。  
しかし小雨の路を慰めるかのように次々と石楠花が迎えてくれる。 奥駈け道
出会の高所(1,700m)にまで咲いている。 今から咲こうとする濃いピンクや
大きな花びらを広げた淡いピンクが歩く路を和ませる。  
 新緑の匂いと霧のような小雨、そこに咲く大自然の石楠花は絵にも描けない
ほど、その瞬間を魅せてくれる。 1300年昔から人が踏んできたこの路に今も
在るのだ。  
 
 大普賢岳の山頂は雲に阻まれて眺望も成らず、記念写真を撮って下山した。
遙かに続く大峰をすこしも見る事が出来なかった、また来るときには何重にも
連なった峰々を俯瞰したいものだ。  
 帰途は入の波(しおのは)温泉で汗と疲れを流し、小雨の上がった吉野川沿い
を下った。  
 
 コース: 和佐又ヒュッテ=笙の窟=石の鼻=奥駆け出会=大普賢岳山頂(往復)

 

(シャクナゲ)

2000/11    山のあなたに逢えました           与作

 二年がかりの大峰山系への入山は2000年11月4日晴天に恵まれて成就した。
遙かに続く奥駈けの連峰も八経ケ岳から見渡すことができた。 そして途中では
白装飾の現代風修験者にも遭え、1300年の古から続く修道の一端を垣間見た。
 
 今回は女性一名も加わり四名での一泊登山となった。天川村は丁度紅葉祭で
役場には朝から人が繰り出してバザーが始まっていた。車を一泊する許可を得
て、行者還トンネルを目指す。祭の都合でタクシーが行ってくれないので、歩
き始めた。一時間経っても幾らも進まない。時間の読みに間違いがあるようだ。
(天川・川合からトンネル西口まで4時間弱) 運良く空のタクシーに出会い
ここぞとばかりに頼み込む。  
 
 奥に進むと全山まっ黄色の山々が迎えてくれた、思わず歓声があがり、運転
手に礼をのべる。 トンネル西口からは石楠花の自生地帯がつづき、約50分で
奥駈道出合に到達。 小雨と空腹を避けるため12時20分に昼食を摂る。  
途中には修験者の彫像、修行場跡がある。 登るにつれて苔と樹林の醸しだす
高級な紫煙にも似た匂いを吸い込み、ハッハーと息をかいて登る。  
小雨も止み、二時間余で宿泊する弥山小屋に到着。 初日の行程は「拾う神」
"大峰タクシー"のお蔭で予定通り早めの投宿となった。(15:40pm)  
 
 二日目は暁に星も見え、晴天のご来光を皆で迎える事が出来た。 (6:20am)
雲海が一帯の山々を覆い、ポツリと真っ赤な光点が朝を押し出してきた。小屋
からきた人皆で思わず拍手。いつ見ても感動する山頂からの日の出だ。  
 
 八経ケ岳(1915m)は近畿最高峰で100名山の一つでもある。 頂から熊野本宮の方
を向けば、遙かに峰々と雲海が続いている。 しかも足元の絶壁の下にも雲が漂
っている。雄大でうっとりとする眺めに、本物の"大峰山"に出会った気がする。
50座を越える峰が連なっていると言う。まだまだ奥はあるが足掛け二年の登頂
はここで満足できた。  
 
 
 紅葉なった下り道、東には稲村カ岳、大日のキレット、大普賢岳がくっきりと
澄んだ秋の空を従えて座っている。 昨年と今年に立った峰が手に届かんばかり
にある。 なんと大きく連なっていることよ!  
 祭りの体温と秋の山々が満足感をさらに深めてくれた。 (完)  
 
 コース: 行者還トンネル西口=奥駆道出合=弥山小屋(泊)=八経ケ岳=弥山=
  =狼平=栃尾辻=川合(役場)・天の川温泉入湯(自家用車で帰途)
     
 四名パーティー: 中山 伝、上田 昌、F.Fujihara、崎田信義(記)  

(弥山の国見八方から拝する日ノ出)
(パーティー)
(大日山と稲村ケ岳のキレットを望む:栃尾辻を下る)

 

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