屋久島&くちえらぶ島

 

2005/6/3〜5                                       ア田信義

 

 有名な白谷雲水峡と昨年秋お世話になった民宿を訪ね、隣の口永良部島を巡ってきた。
梅雨が本格化する前の六月第一週を選び、同じメンバーが鹿児島空港に集合した。車を
港に駐車して、四日目には霧島も歩こうという欲張ったスケジュールで出発した。
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<口永良部島>

 くちえらぶ島は屋久島の西に位置し、周囲が50キロ弱の瓢箪型をしている。学校は
あるが、生徒は10名前後だそうだ。上屋久町の案内資料で「南海ひょうたん島留学」
と言う小中学生を対象にした一年間の里親制度がPRしてある。
 島に行くには宮之浦港から町営のフェリーがあるが、日に一便しかなく、着いて40
分後には出航するので、日帰りツアーは無理だ。民宿のご主人の計らいで別途に船
を頼んで往復する事になった。

 我ら三人以外にも海の幸を手に入れたい人々が乗り込み、快晴の大海原へと出航した。
久しぶりに潮風とお日様に照らされて笑顔、笑顔。 青々とした海流からトビウオが跳ね
上がり、水面すれすれに船先を百メートル以上も飛翔する。 小魚の勇姿に感激した。

 一時間半ほどで湯向(ユムギ)と云う海岸に着いた。現地の民宿に長期滞在中の人が
軽自動車で案内してくれるというので、温泉巡りに向う事になった。 海幸組の人々は
更に船で獲物を探しに向った。
 島の路はほとんどがコンクリート道だが、所々に避難壕がある。この島は活火山なの
で山の中にも備えてある訳だ。路の両サイドから伸び放題の笹竹がせり出し、運転者も
思わず首をすくめる場面もあった。その下には親指の先くらいの木イチゴが自生してい
て、10分も摘めばジャムが数瓶も作れるほどたわわに実っていた。

 島の中心部”本村”から北に行った海岸べりに”西之湯”があり、申し訳程度の屋根と
波を防ぐ壁があるだけの温泉に入る。満潮時にお湯が湧き出るとかで、少ない湯に浸
かるとフナムシが右往左往していた。  車で海岸を回り”寝待温泉”と呼ぶコンクリート
屋根と石を敷き詰めたお湯に入る。長期に湯治する人もおり、海岸の側の奇岩”立神”
付近では海中からもお湯が湧いているそうだ。
 島を一周して三番目の”湯向温泉”に着いた。 やや湯中り気味だが、湯の花も浮いて
いるので泉質は良いようだ。女湯は工事中だったが、大工さんも手を休めて我々の混浴
の邪魔にならないように気を配ってくれた。

 

(西之湯)

(寝待温泉)

 
 吾らビジターには「癒し」の島だが、スーパーもコンビニにも無い環境で、暮らしてゆ
くには相当な覚悟がいる。 海幸をゲットした同乗者と一緒に船で宮之浦港へ戻った。



<楠川歩道>

 翌日も降雨の心配はない天候になり、朝7時から歩き始める。 民宿のご主人の車で
楠川歩道入口まで送ってもらった。 白谷雲水峡に入るには大きなバス道路もあるが、
昨日ふやけた脚を鍛えるには早朝から歩こうというわけだ。

 広い林道の横には大きなシダ類が生え南の島の風情がる、木イチゴもあるが昨日見た
くちえらぶの粒よりも劣る。75分歩いて”三本杉”に達し、屋久杉の森に入ってきた。
数ヵ所の渡渉を越え、不明瞭な径も補正して漸く白谷雲水峡の駐車場に着いた。(8:40)
案内所で協力金300円を払い、歩道の説明を聞いた。 予定している太鼓岩コースは往復
5時間とある。


<白谷の森>

 最短時間で岩に登るため”さつき吊橋”を渡り楠川歩道に入った。いきなり屋久鹿が
静かに苔か何かを食んでいる。 こちらも静かにと思うが、カメラを構えざるをえない。
 曲がりくねった屋久杉が何本もあるが、人が立ったままその根っこをくぐれる杉には
多くの人が手を差し伸べたのか、表皮が肉色に変っている。やがて白谷小屋の分岐に
達し、いよいよ深い森へと踏み入った。

     


 映画「もののけ姫」のモデルともなった神秘的な森が現れた。何百年の時を経たのか
樹林を背景に、その前にあるモスグリーンの苔や岩、古木が光も遮り別世界をかもして
いる。 今にもその妖精が出て我々をもっと奥に案内してくれるような雰囲気になる。

      

   


<太鼓岩>

 「もののけ姫の森」を過ぎると辻峠に出る。そのまま進めば小杉谷、大株歩道を経て
「縄文杉」へ向う事になる。 今回は峠を左に太鼓岩へと向う、約20分で大岩に出る。
岩の下は断崖になっているが、広い天辺には5〜6人が十分座れる広さだ。
 白谷の森から霧が走り、西を眺望すれば雲間から「宮之浦岳」「翁岳」が眺望できた。
去年は最高峰から逆に前岳や森を俯瞰したが、再び仰ぎ見る事ができて満足した。

   


 昼食をすまして峠へ引き返す途中で、木の根がからまった異様な光景に目を奪われた。
「絞め殺し屋」と云われるヤマグルマやアコウの木は杉などの大木に絡み付き、時には
その木を枯らすこともあるそうだ。  雨が多く(年間1万ミリ)、植生が豊な証拠だろう。
深い森ではこんな情熱的なシーンをあちこちで見る事ができた。

       



<屋久杉>

 白谷小屋へ戻り、原生林コースを辿る事にした。  駐車場へ14時にタクシーを頼んで
いるが、時間的に余裕が見込めるので、3キロほど森の路を歩く。大きな屋久杉には名前
が付いていて”奉行杉” ”三本槍杉” ”三本足杉” ”二代大杉”等と標識がある。
鬱蒼とした森は所により薄暗く、突然前から進んできたハイカーが声を上げた。 逆方向
から人が来たので驚いたのだろう、「足が付いているから大丈夫!」と言えば笑が返った。

 予定通り案内所に着いて民宿へ戻り、ご主人に宮之浦港まで送ってもらった。 高速船
トッピーは空いていて定刻の16時15分鹿児島へ向け屋久島を離れた。

 屋久島の一部しか知らないが、白谷の「もののけ姫の森」と太鼓岩からの「宮之浦岳」
が雨の恵みと山塊を物語ることとなった。

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(追記)昨年宮之浦岳からの下山で負傷した時、お世話になった熊毛消防組合の隊員の
  皆さんや民宿「宮之浦荘」のご主人へお礼も果たせた。 同行の二人に再々感謝です。

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